伊勢原の農業用ドローンの活用について

「伊勢原市大田土地改良区で農業用ドローンによる散布試験」を実施するとの文章が2021年2月12日、報道機関に発表した情報として伊勢原市のホームページに掲載されました。「2月17日に、除草剤散布を想定した散布試験を実施する。」予定であるとの事です。農業者の高齢化や担い手不足が課題となっていて、省人化・作業効率化を目的に3月までに県内初となるドローンの本格導入を目指し、当日は株式会社ヒューマンラインの指導の下ドローン農薬散布のデモを実施し、その後の講習会では10人が操作方法を学ぶとの内容でした。除草剤のタイプとしては水溶液と粒剤の2種類があり、それぞれに対応する2種類のドローンを導入し、大田地区の26ヘクタールでの使用を目指すそうです。

以上のホームページ掲載を見て、30年以上前の伊勢原のヘリコプターによる農薬散布を思い出す方々がいて、少々話題になりました。1988年頃に実施されていたと思われる伊勢原のヘリコプターによる農薬散布に関して神奈川新聞1988年8月17日号の記事では、北里大医学部・石川哲教授の話として「決して安全とは言えない。下痢、めまい、頭痛、手足のしびれなどの症状があらわれ、ひどければ中毒症状も起こす」と危険性を伝えています。その後ヘリコプターによる農薬散布は実施されなくなり今日に至っていますが、ではなぜ今ドローンによる散布試験を実施し、導入を目指すのでしようか。市内「大田土地改良組合」や市の話では、農村地域は農業従事者の高齢化や人口減少、担い手不足と言った課題をかかえ、「大田地区」においても同様です。このため、新たな担い手のニーズや、将来の営農者に対する負担軽減に応えるため2017年から農業用ドローンの導入について検討を進めてきました。しかし、神奈川県は、これまでの都市化の進展や県民感情を考慮して、ドローンによる農薬散布については生産者に自粛を要請してきました。しかし、ドローンではヘリコプターより低い高度での散布が可能であり、農薬の飛散が抑えられること、また、防除作業の負担軽減や生産性の向上にも資する技術として期待されている背景があり、2019年と2020年には、県農業技術センターにおいて農薬散布の現地確認試験を実施し、農作物の上空2m以下で散布した場合には、人による散布と同程度であることを確認したとのことです。また、消費者団体との意見交換も複数回行い、農薬散布の実施計画書等の提出を条件に2020年12月、自粛要請を解除することとなりました。ドローンを本格的に活用していく意向ではありますが、利用場所は大田地区の水田内での限定した区域であり、実際に利用する除草剤は粒剤だけで液体を使用する予定はないそうです。

とは言っても、農薬散布はアトピーやアレルギー体質、化学物質過敏症の方たちにとっては、体調に影響する重大な問題です。ドローンによる除草剤散布実施に当たっては、迅速な事前周知が是非とも必要であることを市に伝えました。