伊勢原駅北口整備事業について

伊勢原駅北口周辺地区整備事業における「権利の放棄」については、9月議会で産業建設常任委員会に付託され審査しました。

小田急線伊勢原駅北口は、大山・日向等伊勢原の観光の玄関口と言える場所であり、2016年に文化庁により「日本遺産」として認定を受けてからはますます観光地としての注目を集めています。しかし、駅前は観光を象徴するかのような巨大な鳥居に続き商店街への入り口が見えているにも関わらず、それ以外は食堂や銀行が雑然と並んでいるものの残念ながら観光への期待を高める要素には欠ける風景が広がっています。駅前から少し奥へ入った建物が密集している地域においてはかなりの老朽化が進んでいる様子で、防災上の懸念も指摘され、公共下水道も未整備である等沿線の他の駅と比べても明らかに整備の遅れが目立っています。

伊勢原駅北口周辺地区整備事業については、1990年に都市計画決定し、1991年に再開発組合が設立しましたが、その後バブルが崩壊し長期の経済停滞に見舞われることとなりキーテナントの撤退により整備事業は停止し、整備が進まない状況が長く続いていました。その間、行政サイドでは、都市計画道路伊勢原駅前線用地の先行取得を実施し、暫定バス乗降場やタクシー待機場を整備し現在に至っています。そうした中で近年、民間事業者に対するヒアリングや関係利権者との意見交換では伊勢原駅北口整備に関する実現への方向性が双方で確認され、事業進捗のまたとない機会であるとの報告がありました。しかし、新たな整備事業成立を進めるためには、1991年設立の再開発組合は解散した上で、当時返済不能となっていた組合が市中銀行からの借入金を市が貸付けた「債務を含めた事業計画は不可能」との意見が事業者側から出されました。また、神奈川県からも「確実に事業が成立する資金計画が必要。」との同様の見解が示されました。市の債権の額は約6億5千万円であり、市の財源はあくまでも公平に市民福祉に資するべきと考えるならば、あまりにも莫大な金額であり、看過できるものではありません。一方、組合側も債権についての責任の一端の認識を表明し、「新たな事業に対する全面的な協力したい。」としています。今後の本市の観光地としての可能性の展望や生活環境の改善、安全性の向上等整備を止めるべきではない観点も多々あり、市税増収につながる等を再度考慮し、「債券を放棄」すること「権利の放棄」については賛成としました。

北口整備事業は、当初の計画からは30年に及ぶ時が経過していますが、現在も経済状況は、特にコロナ禍の影響もあり決して楽観視はできないものです。しかし、新しい整備事業においては、「事業が成立しないと判断した場合には、準備組合および権利者に検討費用の返済を求めない旨を事業協力者との協定内容に盛り込む予定であり、事業協力者を選定する基準として考える。」との市の見解も確認しました。市民には、丁寧な説明を尽くすことが求められます。