ホームレス支援を続ける奥田氏は、『元の社会へ戻る意味はあるのか』と問う。

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、社会の中で弱い立場にある人たちを直撃している、と30年以上ホームレス支援を続ける『NPO法人抱僕』代表の奥田知志氏が指摘します。1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマンショックでは、仕事を失い生活が立ち行かなくなることで自殺者や生活に困窮する人たちが増加しました。新型コロナに直面している現在の社会では労働者の4割以上が非正規雇用であり、新型コロナ感染拡大の影響で仕事と住まいを同時に失う人たちの増加が懸念されます。一方、空き家は全国に800万件を上回り、すぐにでも住める物件は200万件以上あると言われています。住まいを確保できれば給付金も受け取りやすく、就活しやすい等住まいがあることは重要と奥田氏は言います。これまでになく大きく社会活動が制限され、私たちは自由に外出できたかつての生活を取り戻したいと願いますが、困難に直面した時に自殺者や困窮者を支えられないような元の社会に戻る意味はあるのか、と奥田氏は問います。コロナで明らかとなった社会保障の脆弱性を見極め、困難な状況に遭遇してもやり直しがしやすい最低限の基盤を築いておくことが求められます。また、奥田氏は人が元気になるためには、人の支えが必要であり、コロナウイルス対策の三密回避は重要ですが、孤立している人たちに「あなたを大切に思っている。」とメッセージを伝え続ける事は支援活動に欠かせないと強調します。コロナの後に待たれる社会とは、誰にとっても安心して暮らし続ける事ができる支え合いのセーフティーネットが備えられている環境ではないでしょうか。