種苗法の改正について

伊勢原市9月議会では「種苗法の改正についての意見書の国への提出及び種苗法改正についての農家、市民への情報提供についての陳情」が提出されました。

種苗法の改正で問題となっているのは、直接農業を営む人や市民へ影響する事ととして今まで農家に基本的に認められていた『種を取ること』や『栽培するなどの作業』の全面禁止、すなわち、栽培した植物の種子をとり、またそれを播く『自家採取』ができなくなることです。また、種子ではなく芽の出た芋を植えて増やすなど栽培の技術である『自家増殖』も原則禁止となります。何故改正をするのでしょうか。「国内特許の海外流出を防ぐため」と農林水産省は設明していますが、国内の農家の『自家増殖』を禁止したからと言って海外流出が防げるわけではありません。自家増殖原則禁止で今までの権利を奪われるのは日本の農家なのです。

一方、種子法廃止と同時に成立した農業競争力強化支援法では、国や都道府県の種苗の知見を民間企業に提供することが求められており、その民間企業には海外の企業も含まれることが国会で答弁されるなど矛盾点がある、と『日本の種子(たね)を守る会』は指摘しており、種子の情報の国外流失を防ぐなら、これを廃止すべきと主張しています。

自家増殖原則禁止と聞いても、何のことか、これからどうなるのか、想像もつかない等市民や全国の消費者の食生活に大きな影響が及ぶ、この法改正について、ほとんどの農家、消費者が知らずに進んでしまう状況にあります。農水省のある農業従事者向けの説明会では、自家増殖原則禁止するのは、登録品種だけで、登録品種は種子全体の5%なので、全く心配いらないとのことでしたが、実際農家で美味しいと評判の良い作物を在来種だと思って増やしていたら、登録品種だったという事例があったそうです。法律違反や訴えられる心配の中で農業をしなければならない状況となるのです。

また、今の種苗法は、原則として自家採取は認められていますが、農水省は自家採取を禁止する作物を増やし続けています。2016年には82種であったのが、2019年には372種になり、ほうれん草や人参は登録品種ではないにもかかわらず禁止植物に入ってしまっているとのことです。このように伝統的に受け継がれてきた農業が農家にとって続けにくくなる可能性があるのです。このように種苗法について、市内の農家、市民、消費者に十分な情報提供を行い、国に対しては拙速な議論、結論を出さないことを求めるのは当然でありこの陳情に賛成しましたが、結果は不採択となってしまいました。