成年後見制度における医療行為の『同意権』について

 

 成年後見制度とは、自分ひとりで判断することが難しい方について、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が、身の回りに配慮しながら財産の管理や福祉サービス等の契約を行い、ご本人の権利を守り生活を支援する制度です。(神奈川県ホームページより)

 

 この成年後見制度には、判断能力が不十分な方々を支援し不利益とならないようにするための『法定後見制度』と、将来判断能力が不十分となった場合に備える『任意後見制度』の二つがあります。近年、法定後見を市町村長が申し立てる件数が増加していますが、その理由は単身世帯や親族のいない高齢者等が増加し、本人をケアし、必要な後見を申し立てる親族が見当たらないケースが増えている事情があるようです。また、今後その需要が増えることが見込まれますが、それぞれの自治体では財源や人員に限界があり、すべてのニーズに対応できるかは残念ながら不明のようです。

 一方、高齢化で必要性が高まると見られる医療に関する『同意権』は、後見人にはありません。後見人の仕事は「財産管理」と、生活・医療・介護などに関する契約や手続きを行う「身上監護」の二つです。手術や治療、検査で入院が必要となるケースでは、誰が同

意して必要な医療を提供することができるのかは、実は課題となっています。

 手術等の場合では、同意は本人しか行使できないものですが、緊急時に本人が意思表示できない場合に家族が同意することがあります。また、幼い子どもが対象の医療では家族の医療同意が、教育監護権を根拠に以前から認められています。しかし、家族・親族がなく、同意能力がない場合はどうするべきなのでしょうか。医療現場では、成年後見人に同意権を付与することを望む声が多いようです。また、諸外国では成年後見人に医療同意権を認め、重大な医療行為については裁判所やその他の第三者機関の責任で判断させるとする事例が多いとの情報もあります。

 今、私たちの暮らしは超高齢化社会を突き進んでいます。『親族がいなくても医療機関や医療関係者が患者に必要な医療を提供すること、また、患者側も親族がいなくても安心して必要な医療が受けられるようにすること』はとても重要です。迅速な法整備が求められています。